表参道通信その22 LECの講演

表参道通信

 11月29日 日曜日の3時からLEC(東京リーガルマインド)渋谷駅前本校で講演をしました。

演題は「司法書士の仕事と生活―司法書士の業務の今を知り、今後を予想する」

以前、不動産受験新報の取材があり、その逆取材の模様をこの表参道通信に掲載しました。(表参道通信その18 1998年4月20日発信)その不動産受験新報7月号の記事を見た司法書士受験予備校 LEC (東京リーガルマインド)からの依頼でした。思いもかけないところからの思いがけない依頼でしたが、もともと「なんでもやってみよう根性」ばかりはたっぷりある私としては、初めてのことではありましたが、日程を私の都合に合わせてくださったので受けてみました。

私が司法書士試験に合格したのは15年前。そんな大昔の受験のノウハウを話しても、セピア色に染まったノスタルジーたっぷりの精神論に陥るのは眼に見えていますので、私が開業後11年間でしてきたこと、その間の世の中の流れとそれに伴う仕事の変化をかなり具体的に話す方が面白いのではと、LECの担当者に話したところ上記の演題になったようです。

正直な話、学校の入り口に上記演題と「講師 司法書士浅野みゆき先生」という張り紙を見つけた時にはそんなすごい話が出来るのだろうかと、心配になりました。
聴講者は70名くらいでしょうか。資格取得予備校の最近の特徴のようで、老若男女色々な世代の人がきていました。ちょうど先月に、司法書士試験の合格発表があって今年の司法書士試験合格者も何人かいたようです。

講演の内容として
1、 私の開業当時の営業戦略的な話
2、 パソコンとインターネットの話
3、 立会いの話
をしました。

資格を持って仕事をしていると、安定して浮世離れしているように思われますが、実は世の中の流れにものすごく密着していて、浮き沈みは激しいし、それが面白いところではあるといった内容で話したつもりです。
色々なレベルの聴講生がいそうでしたので、あえて、実務の手続き的な面や法律的な面を説明するのではなく、世の中との密着度にポイントを置きました。

講演終了後のアンケートを読むと、司法書士の仕事の実体が良く分かって良かったという人がかなりいて、それはそれでうれしいけれど、仕事の一断面の面白そうな所を話しただけでそう言われてしまうのも、ちょっと違うような、他の司法書士に申し訳ないような気もします。

講演が終わったらすぐ帰れると思っていたら、個別受験相談みたいになってしまってそれぞれ相談を受けましたが、具体的な受験の相談にはやはり答えられなくて総論や精神論で逃げざるをえませんでした。合格した途端に司法書士試験受験なんてのは、もはや他人事なんですから。

私が受験生だった頃は、受験予備校も1つか2つしかなく、合格体験記も受験参考書もあまり無く、ましてや今回みたいに現に司法書士をしている人間を見る機会さえも無く、それでも試験に受かってこうやって司法書士をしていますが、今の人達は情報がありすぎてかえって迷いが増えたのでしょうか。「そんなこと考えてるより、とにかく資格取っちゃったら。」とか「考えるより、やってみたら。」とか言いたくなってしまうことがよくあります。

司法書士試験の合格率は今も変わらず2~3%くらい。私の講演を聞きに来てくれた人達の中から合格するのは数からいえばやっと一人くらいです。受験当日、早稲田大学の大講堂で、私のまわり50人が全滅しなければ私は受からないと思って周りを見渡したのを思い出します。

この経済情勢では仕事を辞めて受験生活に突入するのも、かなりのリスクがあります。司法書士の補助者でもと思っても、今時求人募集している事務所はそんなにないでしょう。資格を取って事務所を開業するにもリスクが伴うことを考えると、とにかく自分を信じて納得がいくように生きるしかないのではないかと思います。

開業11年目にしてこういう講演をする機会があって良かったと思います。講演の原稿を作るのに自分のしてきたことをふりかえることが出来ました。「考えるよりやってみたら。」と言うのは、私に対する言葉でもあります。変化を恐れては進歩はありません。