• 1998.12.24

    表参道通信その23 表参道イルミネーション

    表参道通信

     12月17日、表参道のイルミネーションの中止を求める仮処分申請に対し東京地裁はそれを却下する決定をしました。

    初めて、このイルミネーションを見た時は感動して涙が出ました。春は新芽がふき、夏はうっそうと茂るケヤキも秋には風と共に葉が散って枝だけになり、それがクリスマス近くなると光の並木となってよみがえります。

     毎晩、振り返り振り返りしてイルミネーションを眺め、歩道橋に上がって眺め、横断歩道の真ん中で止まって眺め、ここに事務所を持った喜びを味わっていました。一番奇麗なのは、雨の日です。雨の日は見物客が少なく、雨に濡れた車道や歩道にイルミネーションの光が反射して晴れた日の何倍も幻想的な雰囲気になります。

     それが25日の消灯後、すぐに撤去作業が始まります。光の帯が木からどんどんほどかれていき、光の並木はただの冬の並木に戻ります。そして、新年を前にして表参道は明治神宮の参道に変わります。日の丸がはためき、明治神宮の提灯が下がり、葉のすっかり落ちた並木は一気に静粛な雰囲気になります。

     そんな変化を毎年眺めてきた訳ですが、近年ものすごく見物に来る人が増えてきました。テレビのCMで流れたり、番組で取り上げられたりしてからは特にです。かなりの集客力で、周辺のどんなお店も人がいっぱいで地元の商店やレストランにとってはかなり強力な助っ人になっています。

     ただ、住でいる人にとってはかなり生活が不自由になっていると思います。私も、事務所周辺は自転車を利用するのですが、イルミネーション点灯後の表参道は自転車も通れません。急ぎでタクシーを利用したくても、乗ったら最後1時間や2時間は車内でイルミネーションを堪能することになります。仕事帰りに食事をしたくてもどこもかしこも混んでいるので、どこにも寄らないで、すぐに原宿脱出をはかります。

     これが、ここに住んでいる人で、自動車通勤をしている人ならば、自宅手前400mのところでストップ。そこから自宅まで最低1時間なんてことになるのでしょう。それも毎夜です。自転車でのお買物も出来ません。

     一番の問題はイルミネーションによる集客が地元住民にとって、余り利益にはならない事なのではないかと思います。普通の商店街であれば、地元商店のイベントによる集客は街の活性化につながります。が、表参道周辺は、最近は随分、レストランやブティックや美容室やうちのような事務所や会社が奥にまで進出してきましたが、ちょっと入るとまだまだ静かな高級住宅街です。

     受忍限度は超えないという判決でしたが、それに甘えることなくどうぞマナーを守って見物にいらしてください。
    表参道のイルミネーションはどこよりも奇麗でロマンチックで、私は大好きです。

  • 1998.12.03

    表参道通信その22 LECの講演

    表参道通信

     11月29日 日曜日の3時からLEC(東京リーガルマインド)渋谷駅前本校で講演をしました。

    演題は「司法書士の仕事と生活―司法書士の業務の今を知り、今後を予想する」

    以前、不動産受験新報の取材があり、その逆取材の模様をこの表参道通信に掲載しました。(表参道通信その18 1998年4月20日発信)その不動産受験新報7月号の記事を見た司法書士受験予備校 LEC (東京リーガルマインド)からの依頼でした。思いもかけないところからの思いがけない依頼でしたが、もともと「なんでもやってみよう根性」ばかりはたっぷりある私としては、初めてのことではありましたが、日程を私の都合に合わせてくださったので受けてみました。

    私が司法書士試験に合格したのは15年前。そんな大昔の受験のノウハウを話しても、セピア色に染まったノスタルジーたっぷりの精神論に陥るのは眼に見えていますので、私が開業後11年間でしてきたこと、その間の世の中の流れとそれに伴う仕事の変化をかなり具体的に話す方が面白いのではと、LECの担当者に話したところ上記の演題になったようです。

    正直な話、学校の入り口に上記演題と「講師 司法書士浅野みゆき先生」という張り紙を見つけた時にはそんなすごい話が出来るのだろうかと、心配になりました。
    聴講者は70名くらいでしょうか。資格取得予備校の最近の特徴のようで、老若男女色々な世代の人がきていました。ちょうど先月に、司法書士試験の合格発表があって今年の司法書士試験合格者も何人かいたようです。

    講演の内容として
    1、 私の開業当時の営業戦略的な話
    2、 パソコンとインターネットの話
    3、 立会いの話
    をしました。

    資格を持って仕事をしていると、安定して浮世離れしているように思われますが、実は世の中の流れにものすごく密着していて、浮き沈みは激しいし、それが面白いところではあるといった内容で話したつもりです。
    色々なレベルの聴講生がいそうでしたので、あえて、実務の手続き的な面や法律的な面を説明するのではなく、世の中との密着度にポイントを置きました。

    講演終了後のアンケートを読むと、司法書士の仕事の実体が良く分かって良かったという人がかなりいて、それはそれでうれしいけれど、仕事の一断面の面白そうな所を話しただけでそう言われてしまうのも、ちょっと違うような、他の司法書士に申し訳ないような気もします。

    講演が終わったらすぐ帰れると思っていたら、個別受験相談みたいになってしまってそれぞれ相談を受けましたが、具体的な受験の相談にはやはり答えられなくて総論や精神論で逃げざるをえませんでした。合格した途端に司法書士試験受験なんてのは、もはや他人事なんですから。

    私が受験生だった頃は、受験予備校も1つか2つしかなく、合格体験記も受験参考書もあまり無く、ましてや今回みたいに現に司法書士をしている人間を見る機会さえも無く、それでも試験に受かってこうやって司法書士をしていますが、今の人達は情報がありすぎてかえって迷いが増えたのでしょうか。「そんなこと考えてるより、とにかく資格取っちゃったら。」とか「考えるより、やってみたら。」とか言いたくなってしまうことがよくあります。

    司法書士試験の合格率は今も変わらず2~3%くらい。私の講演を聞きに来てくれた人達の中から合格するのは数からいえばやっと一人くらいです。受験当日、早稲田大学の大講堂で、私のまわり50人が全滅しなければ私は受からないと思って周りを見渡したのを思い出します。

    この経済情勢では仕事を辞めて受験生活に突入するのも、かなりのリスクがあります。司法書士の補助者でもと思っても、今時求人募集している事務所はそんなにないでしょう。資格を取って事務所を開業するにもリスクが伴うことを考えると、とにかく自分を信じて納得がいくように生きるしかないのではないかと思います。

    開業11年目にしてこういう講演をする機会があって良かったと思います。講演の原稿を作るのに自分のしてきたことをふりかえることが出来ました。「考えるよりやってみたら。」と言うのは、私に対する言葉でもあります。変化を恐れては進歩はありません。