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2006.05.23
有限会社から株式会社への変更手続きが簡単になりました。
「有限会社を株式会社へ変えるのに純資産の証明書はどう作るのですか?」という質問をいただきました。
確かに旧商法では有限会社から株式会社へ組織変更するには、純資産として金1000万円以上あることが必要で、登記にはそれを証する貸借対照表が必要でした。そして多くの有限会社はそのハードルをクリアできず、株式会社への組織変更が出来ないでいました。
また、株式会社に組織変更するには旧商法では取締役が3名以上、監査役が1名以上必要でしたので、取締役1人の有限会社などは他の役員を補充できずに、組織変更をあきらめていました。
それが改正会社法が施行された本年5月1日からは純資産が1000万円あることが必要という要件は無くなり、また、取締役3名以上監査役1名以上という機関設計の制限もなく、そのままの体制で株式会社になることが出来るようになりました。
ですから、今では資本金300万円、取締役1名の有限会社は資本金300万円、取締役1名の株式会社に変更する事が可能です。
また、資本金1円の確認有限会社も資本金1円の株式会社に変更が可能です。
◆有限会社の株式会社への以降手続きは以下です。(整備法45条、46条)
- 株主総会の開催
議案 商号変更 有限会社○○から株式会社○○へ変更
株式会社の定款の承認(新たに定款を作成することが必要) - 会社実印の発注 株式会社の印鑑を作成
- 登記申請(1件目と2件目を同時に申請)
1件目 商号変更による設立 登録免許税 資本金の額の1000分の1.5
それが3万円に満たない場合は3万円2件目 商号変更により解散 登録免許税 3万円
- 登記必要書類
株主総会議事録
定款
委任状
代表者の個人の印鑑証明書(3ヶ月以内) 1通
改印届け用紙
◆編集後記
新しい会社法の世界はサプライズの連続です。旧商法でいう「第三者割当」、新会社法では「募集株式の発行」と言う事になりましたが、その議事録等、必要書類一式を条文から作成してみました。学者さんは概念を論じていれば良いですが、司法書士は「手続きは?」「議事録の文言は?」「で、それで登記できるの?」と実際に会社法を使う手続きです。「現場最前線」ホントにそんな感じ。 - 株主総会の開催
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2006.05.12
新興上場企業に思わぬ影響
◆譲渡制限の無い資本金1億円以下の株式会社の監査役の任期は改正会社法施行時に任期満了する。
この件に関して以前(4月10日のブログ・カテゴリー 監査役)にも書きました。
株式の譲渡制限の設定の規定の無かった頃に設立された資本金1億円以下の古い会社が問題になると書きました。実際に、この問題を回避するために会社法施行前に急ぎ臨時株主総会を開催して株式の譲渡制限の設定の登記をした会社もあります。
しかし、新興上場企業も問題になるようです。
日本経済新聞に「5月1日施行の新会社法が新興上場企業に思わぬ影響を及ぼしている。」と東証マザーズ上場の株式会社の例を掲載していました。
この会社のホームページのIR情報によると、
平成18 年5 月1 日付の会社法の施行に伴い、従来の会計監査権限のみの現任3名の監査役は任期満了の取扱いとなり、監査役の法定員数を欠くこととなりました。現在、監査役の人選を慎重に行っており、人選が確定次第、東京地方裁判所へ仮監査役選任の申請を行う予定、ということです。
この会社は、平成17 年12 月の増資により現在は資本金が1億円を越えて小会社(資本金1 億円以下かつ負債総額200億円未満の株式会社)ではなくなりました。
しかし、その後最初に到来する決算期の定時株主総会の終結時点までは小会社特例規定が適用されます。(商法特例法26 条1 項)
従って、この会社の監査役は会計監査権限しか無く、新会社法が予定する業務監査権限が無いので監査役は新会社法施行の本年5月1日に退任する事になりました。で、本年5月1日には監査役がいないことになりましたので、こういう会社は急ぎ臨時株主総会を開催して監査役を選任するか、臨時株主総会の開催が困難な時は裁判所に仮監査役の選任を申請することになります。
[注意!]
顧問先を抱える会計事務所、新興上場会社の総務、法務部門の方、会社の登記簿を確認して下さい。現在資本金が1億円以上の会社でも商法特例法26条1 項の適用があって監査役の任期について公開小会社と同じ扱いになる場合があります。 -
2006.05.02
どういう会社を設立するか
■ どういう会社を設立すれば良いでしょうか?
そういう質問が多くなりそうです。
新会社法のもとでは、株式会社は資本金は0円でも良い。
取締役は1人でもOK。監査役もいなくても良い。
以前は、資本金1000万円以上、取締役3名以上、監査役1名以上。
と、お仕着せの会社を作れば良かったのですが、自由になるとかえって迷う。そんな状態です。■ では、会社を設立するうえでの判断基準は?
- 意外と旧法の会社の機関設計の資本金1000万円以上、取締役3名以上、監査役1名以上というのに引っ張られるような気もしています。
なんとなく 安心で。 - 許認可が必要な会社では先にその許認可用件を調査しておく必要があります。
- 創業支援の融資を受けるという事を考えている会社は、その条件を確認しておく必要があります。
- 会社の所属業界で、取引相手として相手にされる位の規模にする必要もありそうです。
- 新会社法が想定しているのは、新規事業の立上げを簡単にして起業の支援をする事のようですので、とりあえず手持ち資金、手持ち人材で会社を立ち上げて、2、3、4の条件にあう会社に育てるという方法もあります。
- 意外と旧法の会社の機関設計の資本金1000万円以上、取締役3名以上、監査役1名以上というのに引っ張られるような気もしています。