• 2000.07.19

    表参道通信その35 『「捨てる!」技術』を読んで捨てたもの

    表参道通信

     本を買う時は、巷で評判になっている物、ベストセラーになっている物、どこかの書評で紹介されたもの、又は昔から好きだった作家の書いたものの中から選ぶようにしている。ひとたび、つまらない本を買ってしまった時の文章の読み難さ、読み難いながらも読み進める苦痛、苦痛だからいつまでも読まないで鞄の中に入っている重たさ。そんな三重苦のために払ってしまった本の代金。アッという間の四重苦。

     どこで読んだのか分からないけれど、『「捨てる!」技術』という本の書評は、そのタイトルの付け方か良くて売れていると書いてあった。もったいないと思う気持に逆行する「捨てる」という言葉をそのまま使って、捨てる!と言い切る勇気、「!」をつけて強調し、そのうえ「 」まで付ける。捨て方とか方法とかいわずに「技術」と言ってしまう。新書であるにも関わらず売れている。タイトルの勝利である、と。

     本屋では売れている本らしく目立つ所に平積みにされ、白い表紙に黒字のそのタイトルが強烈に目に入って来た。「アーこれがあのどこかで紹介されていたあの本か。」と思わず手にとってみて、読んでみるとタイトル通り捨てる技術について書いてある。新書で薄くて、通勤に読むには良さそうと買ってみた。

     確かにどこかの書評で紹介されていた通り、タイトルの勝利のようだ。『技術』と言っても、要するに「考え方を変えて捨てよう」ということだ。それを、色々な物、たとえば本、洋服、記念品、家具等で心持ちは違ってくるけれど結局は捨てた方が生活は快適だということ。最初から最後まで捨てることについて書いてある。タイトルを裏切らない。新しい所では、捨てた後、万が一資料として必要になっても、本等はインターネットで探せばなんとかなるとか、捨てるのに忍びなけれがインターネットオークションを利用しようとか今時の方法も提示されていること。

     ただ、この本の効果は抜群で、読んでいる間中、物を捨てたくてうずうずしてしまった。通勤の電車3往復くらいで読んでしまったが、その間、捨てられなかったTシャツやパジャマ、気に入ってよく着ていたスーツだけど、染みが付いていて着られなくなったもの、台所に下にいつか使うだろうと思って取っておいた密閉式のビン、増えすぎたポロシャツ、雑誌、底にすこーし残ったまま放ってあった化粧品等思いきり良く捨てることが出来た。

     何と言っても一番すごい効果は、車内で読み終わった『「捨てる!」技術』を降りた駅のごみ箱にためらいなくすぐ捨ててしまったこと。だから、この本の出版社や著者はもう分かりません。知りたい方はネット上の本屋さんで検索をどうぞ!