• 1999.03.08

    表参道通信その26 東急百貨店日本橋店の閉店

    表参道通信

     日本橋にある東急百貨店日本橋店が閉店した。不景気の波が白木屋時代からの老舗百貨店までも押し潰したとの見方があるが、本当にそうだろうか?

     確かに私も、都心に住んでいた頃は渋谷や銀座のデパートでお買物をしたりしていた。しかし、結婚して東京郊外に住んでみると、大きな駐車場のあるショッピングセンターやアウトレットやディスカウントストアに車で乗り付け、そこでお買物をしている。今更、人の多い、駐車するのも大変な都心のデパートになんか出かけたいとは思わない。

     港北ニュータウンにある東急百貨店港北店、東急ショッピングセンターはベビーカーを押した若い夫婦でいっぱいだ。都心とは違う消費形態が東京近郊には確かに存在する。

     高島屋や三越は日本橋にあってこそ高級感を売りにする高島屋であり、三越である。それに対して、閉店セールに来ていた人がテレビのインタビューに答えて「東急百貨店は庶民的なところが良かった。」と言っていたが、確かに、東急百貨店の品揃えといいディスプレーといい実に庶民的で、だからこそ、日本橋などにある必要はないといえるのではないか。

     東急百貨店は消費形態にあわなくなった日本橋店を何時までも抱えているプライドを捨てて、より消費者の消費形態にあわせた作戦にうって出たと見るべきではないか。

     景気をはかる目安として、百貨店の売り上げや大手スーパーの売り上げがよく取り上げられるが、それが本当に景気をはかる目安となる数値なのだろうか。

     確かに景気が悪く、百貨店も大手スーパーも売り上げが落ちているのだろうが、それ以上に消費者の消費形態が変わってきているからではないだろうか。百貨店の売り上げが落ちたから、大手スーパーの売り上げが落ちてきたからといって、消費が伸びない、景気が悪いと言ってしまえるのだろうか。百貨店は前よりも客が来ていないのが、客の側からも実感出来るし、近くのスーパーなどは夜10時までの開店時間を9時までにしたりしているが、それでも、閉店間際には客よりも従業員の方が多いくらいだ。それに対して、近くのディスカウントストア、「ドンキホーテ」は夜中の2時くらいまでやっていて、何時になっても人がいっぱい来ているし、コンビニには若い人ばかりではなく、普通の主婦も買物に来る。

     新車の売り上げ台数も、よく景気のバロメーターにするけれど、少なくとも10年は故障もない車を車検のたびに買い替えるという消費者はもう昔ほど存在しないのではないか。買い換える事がステイタスにならなくなっているのではないか。

     バブルで消費を極め、1ドル100円の円高の恩恵で、どんどん海外に出かけた消費者は海外の消費ばかりではない生活を見てきたし、車をとことん乗り潰すのも悪くないと、学習しているはず。
    そんな消費者の消費動向を、百貨店の売り上げと新車の売りあげ台数ではかり、景気のバロメーターにするのはもう無理があるのではないだろうか?

     では、消費はそれほど落ち込んでなくて、それで、実は人がいうほど不景気ではないといえるのか。という話は又の機会に。