• 1997.03.03

    表参道通信その10 グレートムタ

    表参道通信

     最近は、毎週月曜日10時からの『SMAP×SMAP』をチョー真剣に見る以外は、とりたててテレビを見る事もないのですが、土曜日の深夜、寝ようかなと思っていながら、テレビをつけてしまったら、なんと、が出ていました。

    先週も、同じ時分に同じ事をして、獣神サンダーライガーと大谷の札幌での20何分にも及ぶ死闘を見てしまって、眠れなくなったのに、ああ、また同じ事をしてしまった。
    一時は、「新日本プロレス」から、馬場さんの「全日本」、たまにやる「全女」こと全日本女子プロレス、日曜日のお昼のK1、どうせなら「リン魂」(うっちゃん、ナンちゃんのナンちゃんがやってる、「リングの魂」という格闘技番組です。)も押さえなきゃと、それぞれビデオに撮って夕食を食べながら見たりしていましたが、最近は全然見なくなって、土曜日にやっているのも知りませんでした。

     で、グレート ムタですが、アナウンサーの解説によると、怪我で休んでいた越中との復帰戦とのこと。
    「でもどうして、グレート ムタなの?誰かグレート ムタの2代目にでもなったの?」
    疑問のまま、見ていると、ムタの後頭部を見た途端に分かってしまいました。
    「あの薄さは・・・・なんだ、やっぱり武藤じゃないの。」
    顔にペイントをし、赤い長ズボンをはいていても、後頭部は紛れもなく新日本のヒーロー、武藤なのでした。
    アメリカで、形勢不利となると謎の緑の粉を噴く悪役レスラーだったグレートムタも、日本に帰ってきて顔のペイントを落とし、赤パンツで爽やかにいいものレスラーになりました。確かに、デブの橋本より、スタイルもいいし、ちょっと甘いマスクでかっこいいので、猪木さんは武藤にトップを取らせるのかなと思っていました。その武藤が、とうとう橋本に新日本のトップを渡してヒール ムタに逆戻りしたのかと思ったら、そうでもないらしいのです。ヒーロー武藤はとりあえず置いといて、顔に色を塗ってここはムタになっているらしい。
    「そんな事アリなわけ?」と、見ていると、ムタの得意技「緑の粉吹き出し攻撃」が始まった。「いつ、粉を口に入れたんだろう?」
    おおーっと!今度はリングサイドのベンチを持ち出した。ちゃんとヒールになりきっている。
    でも結局、決め技は、いつもの武藤のランディング・ボディプレスなのは、ちょっと残念でした。ヒール ムタらしいエグイ技で思わず越中に同情が集まるようにもっていって欲しかったですね。
    で、驚いたのは、お客さんで、みんな分かっていて、ちゃーんと分かっていて、ムタとして応援してるんです。やさしい。ほんとにやさしい。みんな大人です。「ムトー!」なんて、声援は絶対にしない。団体の作り上げた虚構の世界に身を任せて、楽しむ。プロレス物語を楽しむ究極の秘訣を見ました。
    ムタが勝って、越中の復帰戦も無残に終わり、それぞれリングから退場しようとしていると、出てきました。牒野の軍団です。引き上げようとするムタに自分の着ているTシャツを脱ぎ、渡そうとします。ヒール ムタに悪役の仲間になれという、パフォーマンスらしいのです。
    「ムタが、ここで仲間になったら・・・・エー!武藤はどうなっちゃうの?」
    人間関係鳥瞰図を頭に浮かべながら、ワクワク事の成り行きを見守っていると、よりによってアナウンサー、「こーれは、入れないですよね。ムタは新日本の武藤なんですからね。」

    「んなことは、分かってるんだよ!」
    思わず、テレビに向かって声を荒げる土曜日深夜の私でした。