表参道通信その23 表参道イルミネーション

表参道通信

 12月17日、表参道のイルミネーションの中止を求める仮処分申請に対し東京地裁はそれを却下する決定をしました。

初めて、このイルミネーションを見た時は感動して涙が出ました。春は新芽がふき、夏はうっそうと茂るケヤキも秋には風と共に葉が散って枝だけになり、それがクリスマス近くなると光の並木となってよみがえります。

 毎晩、振り返り振り返りしてイルミネーションを眺め、歩道橋に上がって眺め、横断歩道の真ん中で止まって眺め、ここに事務所を持った喜びを味わっていました。一番奇麗なのは、雨の日です。雨の日は見物客が少なく、雨に濡れた車道や歩道にイルミネーションの光が反射して晴れた日の何倍も幻想的な雰囲気になります。

 それが25日の消灯後、すぐに撤去作業が始まります。光の帯が木からどんどんほどかれていき、光の並木はただの冬の並木に戻ります。そして、新年を前にして表参道は明治神宮の参道に変わります。日の丸がはためき、明治神宮の提灯が下がり、葉のすっかり落ちた並木は一気に静粛な雰囲気になります。

 そんな変化を毎年眺めてきた訳ですが、近年ものすごく見物に来る人が増えてきました。テレビのCMで流れたり、番組で取り上げられたりしてからは特にです。かなりの集客力で、周辺のどんなお店も人がいっぱいで地元の商店やレストランにとってはかなり強力な助っ人になっています。

 ただ、住でいる人にとってはかなり生活が不自由になっていると思います。私も、事務所周辺は自転車を利用するのですが、イルミネーション点灯後の表参道は自転車も通れません。急ぎでタクシーを利用したくても、乗ったら最後1時間や2時間は車内でイルミネーションを堪能することになります。仕事帰りに食事をしたくてもどこもかしこも混んでいるので、どこにも寄らないで、すぐに原宿脱出をはかります。

 これが、ここに住んでいる人で、自動車通勤をしている人ならば、自宅手前400mのところでストップ。そこから自宅まで最低1時間なんてことになるのでしょう。それも毎夜です。自転車でのお買物も出来ません。

 一番の問題はイルミネーションによる集客が地元住民にとって、余り利益にはならない事なのではないかと思います。普通の商店街であれば、地元商店のイベントによる集客は街の活性化につながります。が、表参道周辺は、最近は随分、レストランやブティックや美容室やうちのような事務所や会社が奥にまで進出してきましたが、ちょっと入るとまだまだ静かな高級住宅街です。

 受忍限度は超えないという判決でしたが、それに甘えることなくどうぞマナーを守って見物にいらしてください。
表参道のイルミネーションはどこよりも奇麗でロマンチックで、私は大好きです。